Concept

石が砕かれるとき、私たちは内側に閉じ込められた何億年もの前の空気に触れることができる。

石に穴を穿(うが)つとき、わたしたちは向こう側にある小さくて優しい風を感じることができる。

石を研ぎすますとき、そっと触れた石の肌から自然と調和する接点をかすかに感じることができる。

淺野卓司 Takuji ASANO

  

私の制作テーマになっているものは、「未知なる遺物・自然」です。古代文明における遺跡には天体観測と深く関わっていた形跡を色濃く残すものがあります。正確な天体観測は、狩猟・農耕に頼る生活において、収穫を示す夏至・冬至を把握することに繋がったようです。このように、巨大な石の建造物には現代の我々の想像を超えた、“隠されたもの”を含んでいます。さらに、悠久の時間(とき)の流れに内在するものは、人と自然との関わり方を思考錯誤してきたドラマであるとも言えます。人間が求め続けた自然との調和は、現代社会において少し感じ得ることが難しくなってしまったように思いますが、石を刻むことで、人が忘れてしまった何か「普遍的存在」に触れることができるのではないかと思っています。 

難波皆子 Minako NAMBA

 

最近街や、公園などにはいろいろな彫刻があります。形の美しいもの、大きなもの、技法が優れているものなど。その中で私の造る作品は、でき上がったときが完成なのではなく、その街や場所に住んでいる人などが「なんだろう」と興味を持って触れたり、遊んだりしていくうちに完成する作品でありたいと思っています。そして、見る人のイメージがふくらむような(私の場合は主に植物の種や、実などからイメージしています。) 思わず触ってみたくなるような ”彫刻”そのものというよりも、暖かい”空間”を造っていきたいと思っています。 そういった意味でも最近は、ストリートファニチャーと呼ばれているベンチや車止め、遊具にも成り得る作品を主に造っています。それら作品のある空間に触れたとき、何か「ホッ」とするものを感じてもらえたら、と思っています。